日本の競馬ファンにとって、中央競馬の開催地は「西の雄」として、常に京都競馬場が特別な存在であり続けてきました。

約3年半の大改修を経て、2023年4月に「センテニアル・パーク」として生まれ変わった京都競馬場は、伝統と最新鋭の設備が融合した、まさに古都の新しいエンターテイメント拠点です。

本記事では、この「西の大舞台・京都」の魅力を徹底的に掘り下げ、リニューアル後の最新施設、独自のコース特性、そして子供から大人、初心者からベテランのファンまでが京都競馬場を最大限に楽しむための詳細なガイドを提供します。
春・秋のGⅠシーズンに加え、年間を通じて楽しめる新施設やイベント、そして「勝つため」のコース戦略まで、新しい京都競馬場の全てを凝縮してお届けします。

京都競馬場の基本情報と歴史

概要と開催時期

京都競馬場は、JRA(日本中央競馬会)が主催する中央競馬の開催場の一つです。

  • 所在地京都府京都市伏見区
  • 特徴JRAの競馬場の中で、最も高低差が激しいコースの一つであり、ダイナミックなレース展開が魅力です。
  • 主な開催時期
    • 冬の開催1月~3月上旬頃
      年始の「日経新春杯(GⅡ)」や、春のG1戦線へ向けて重要な「京都記念(GⅡ)」などが組まれます。
    • 春の開催(GⅠシーズン)4月~5月
      伝統と格式の長距離戦「天皇賞(春)(GⅠ)」をはじめ、「マイラーズカップ(GⅡ)」「京都新聞杯(GⅡ)」など、春の主要レースが集中します。
    • 秋の開催(GⅠシーズン)10月~12月上旬
      牝馬三冠最終戦「秋華賞(GⅠ)」、牡馬三冠最終戦「菊花賞(GⅠ)」、国際色豊かな牝馬限定戦「エリザベス女王杯(GⅠ)」、短距離の頂点「マイルチャンピオンシップ(GⅠ)」とGⅠが集中するほか、「京都大賞典(GⅡ)」「スワンステークス(GⅡ)」「デイリー杯2歳ステークス(GⅡ)」など、重賞レースが目白押しです。
※開催スケジュールは開催年によって変化しますので、詳しくはJRA公式サイト(開催日程)にてご確認ください。
※2024年は、阪神競馬場のリフレッシュ工事に伴い、第65回宝塚記念(GⅠ)も京都競馬場で開催されました。
第65回宝塚記念開催案内板

歴史:伝統と未来が融合した「センテニアル・パーク」

京都での競馬の歴史は古く、1925年(大正14年)に現在地で公認競馬がスタートしました。
2025年に100周年を迎えるにあたり、2020年から大規模な改修工事を実施。
2023年4月に「JRAセンテニアル・パーク京都競馬場」(100周年の公園)としてリニューアルオープンしました。

この改修に伴い、従来のスタンド名称も変更され、旧「グランドスワン」が「ゴールサイド」に、旧「ビッグスワン」が「ステーションサイド」として生まれ変わっています。

新しいスタンド「ゴールサイド」は、最新技術を導入しつつも、周囲の景色や自然に配慮したデザインとなっており、快適性が大幅に向上。
家族連れや初心者にも優しい「公園」のような空間へと進化しました。

京都競馬場の最大の魅力:高低差が生む究極のドラマ

京都競馬場が他の競馬場と一線を画す最大の理由は、その激しい高低差と、壮大な外回りコースの存在です。
この独特の形状が、「淀の坂」を舞台にした、手に汗握る究極のレース展開を生み出します。

西日本一の「急坂・外回り」コース

JRAの主要な競馬場の中でも、京都は中山競馬場と並び、起伏に富んだコースとして知られます。

  • コース形態
    全周1782.8m(内回り)、1894.3m(外回り)の右回り。
    外回りコースはJRAでも屈指の距離を誇る壮大なカーブが特徴です。
  • 勾配(高低差)
    芝コース全体で約4.3mという、非常に大きな高低差を持ちます。
    特に3コーナーから4コーナーにかけての下り坂は長く、スピードに乗った馬が勢いをつけて最後の直線へ向かう、迫力満点の展開が魅力です。
コース一周距離幅員直線距離高低差主な発走距離
芝コース(外回り)1,894.3m24~38m403.7m4.3m3,000m(長距離)他
芝コース(内回り)1,782.8m27~38m328.4m3.1m1,600m(マイル)他
ダートコース1,607.6m25m329.1m3.0m1,800m他

※上記は芝Aコースのデータです。
詳しいコース詳細は、JRA公式サイト(コース紹介:京都競馬場)からご確認ください。

「淀の坂」が生むドラマ:差し・追い込み馬の躍動

この「急坂・長大な外回り」という組み合わせは、レース展開に明確な影響を与えます。

  • 外回りコースでの豪快な差し切り3コーナー頂上から4コーナー、そして直線にかけての約600mにわたる下り坂で、逃げ・先行馬はスタミナを消耗し、差し・追い込み馬は勢いをつけます。
    特に長距離レースでは、外回りを通る差し馬が直線で一気に集団を飲み込む「豪快な差し切り」が多発し、京都競馬場の最大の醍醐味となっています。
  • 内回りコースでの波乱内回りコースは、直線が短くタイトなコーナーが多いため、先行馬が粘り込みやすく、展開によっては波乱が起きやすい傾向があります。

芝とダートの特性(リニューアル後)

  • 芝コース
    2023年のリニューアルに伴い、路盤と芝の状態が一新されました。
    水はけが良く、開催初期は高速馬場になりやすい傾向があります。
    長大な直線(外回り403.7m)が、能力の高い差し馬の活躍を後押しします。
  • ダートコース
    ダートも路盤が改修され、走りやすい状態が維持されています。
    高低差はありますが、比較的先行馬が有利なコースです。

【結論】
京都競馬場は、前半は我慢し、後半の下り坂からトップスピードに乗せる「瞬発力」と「スタミナ」を併せ持つ馬が活躍する舞台です。
伝統のGⅠレースに見られるような、壮大でダイナミックなドラマが展開されます。

新しい京都競馬場を楽しむ!施設・グルメ・イベントガイド

馬券だけでなく、リニューアルされた競馬場全体を愉しむのが、新しい京都競馬場の魅力です。

快適な観戦環境:最新スタンド「ゴールサイド」

リニューアルの目玉である新スタンド「ゴールサイド」は、ガラス張りを多用したモダンな設計で、開放感あふれる観戦環境を提供します。

  • 一般席広々としたスペースと大型ビジョンがあり、迫力あるレースを間近で楽しめます。全席禁煙で、クリーンな環境です。
  • 指定席眺望抜群の「A指定席」「B指定席」「スマートシート」に加え、最大8名まで利用可能な半個室の「駒見小路」など、多様な席種が用意されています。
※詳細は、JRA公式サイト(指定席:京都競馬場)でご確認ください。

京都ならではの味覚!「食」の楽しみ

リニューアルに伴い、飲食店も充実。
京都ならではの老舗や、バラエティ豊かなグルメが楽しめます。

  • 老舗の京料理京都らしい上品な出汁のうどんや、和食を提供する店舗が出店しており、競馬場で本格的な京の味を楽しめます。
  • 全国区&定番の味手軽なファストフードから、カレー、ラーメンまで、定番の競馬場グルメも豊富に揃っています。
    レースの合間にサッと食べられるテイクアウト店舗も充実しています。
※グルメ内容(店舗等)については、JRA公式サイト(レストラン・ファストフード:京都競馬場)からご確認ください。

家族連れも大満足!キッズ&イベント

新しい京都競馬場は「公園」をコンセプトに、ファミリー向けの設備が大幅に強化されました。

  • うまDOKIパーク(旧:陽だまり広場)
    スタンド前広場から直接アクセスできる広大な屋外エリア。芝生が広がり、ピクニック気分でリラックスできます。
  • キッズプラザ・屋内あそび場
    天候に関わらず楽しめる屋内遊具エリアが設置され、子供たちが安全に遊べる空間が充実しています。
    特に2024年4月にオープンした大型屋内あそび場「Paka Run!(パカラン)」は、ボーネルンド社がプロデュース。
    生後6ヶ月から12歳までを対象とし、4つのエリア(パーク、アクティブ、イマジネーション、ベビー)で構成されており、雨の日や猛暑日でも全力で遊べる全天候型の施設として、ファミリー層から絶大な人気を集めています。
    ※利用には「競馬場イベント参加アプリ」での事前予約が必要な場合があります。
  • ポニー・乗馬体験
    開催日には、ポニーとのふれあいや乗馬体験会が開催され、動物との触れ合いを通じて競馬を身近に感じることができます。
  • イベント広場
    GⅠ開催時には、騎手やタレントを招いたステージイベント、地元の物産展などが定期的に開催され、競馬がない日も賑わいを見せています。

女性専用の憩いの場:UMAJOスポット

JRAが推進する女性向けプロジェクト「UMAJO(ウマジョ)」。
リニューアルされた京都競馬場にも、女性のお客様が安心して、快適に過ごせる「UMAJO SPOT」が設置されています。
最新の場所やサービス内容はJRAのUMAJO公式サイト等でご確認ください。

※女性専用エリアにつき、詳細な内装やサービス内容は、UMAJO公式サイト等でご確認ください。

京都競馬場デビュー!初心者向けガイド

「競馬場に行ってみたいけど、ルールがわからない」「馬券の買い方が不安」という初心者の方でも、新しい京都競馬場はデビューに最適な場所です。

競馬場を楽しむための3つのステップ

  1. コースの迫力を体感:ゴール前へ
    新スタンド「ゴールサイド」のゴール板付近でレースを観戦しましょう。
    特に長い下り坂を経てくる外回りレースでは、馬群が一気に押し寄せる地響きとスピード感は圧巻です。
  2. 馬との出会い:パドックへ行こう
    レース直前に馬が周回する「パドック」へ足を運びましょう。
    馬の息遣い、筋肉の躍動、そして騎手の真剣な眼差しを間近で感じることができます。
    パドックで馬の様子を見て、「この馬だ!」と直感で決めるのも競馬の醍醐味です。
  3. 馬券にチャレンジ:少額から楽しむ
    まずは100円から、お気に入りの馬の「単勝(1着になる馬を当てる)」や「複勝(3着までに入る馬を当てる)」といった簡単な馬券から購入してみましょう。
    JRAの窓口(マークシート)の書き方や、「UMACA(ウマカ)」というICカードでのキャッシュレス投票など、初心者向けのガイドサービスが充実しています。

勝つための馬券戦略:坂を味方にする馬を見抜け

京都競馬場のコース特性を理解することは、馬券的中に直結します。
ここでは、京都で勝利を掴むための、少し踏み込んだ攻略法を紹介します。

「京都巧者」の条件

京都の特殊なコースで好走する馬には、共通する特徴があります。

  • 下り坂適性急な下り坂でスピードに乗れるコーナリング技術と、勢いを落とさずに加速できる器用さが必要です。
  • 瞬発力(キレ)平坦な東京や新潟のような直線一気のキレ味ではなく、下り坂で溜めた脚を、平坦な直線で一気に爆発させる持続的な瞬発力を持つ馬を評価しましょう。
  • スタミナ外回りコースは距離が長く、下り坂でスピードに乗るため、見かけ以上にスタミナが要求されます。長距離適性や、タフなレースでの実績を確認しましょう。

データで見る攻略のヒント

  • 距離別傾向
    • 芝外回り
      差し・追い込みが非常に利きやすいコースです。
      逃げ切りは難しく、中団〜後方からレースを進める馬に注目です。
    • 芝内回り(マイル戦など)
      外回りに比べ直線が短いため、先行馬が有利になりますが、最後の坂で失速する逃げ馬も多いため、2〜3番手から抜け出す馬の信頼度が高いです。
    • ダート
      芝スタートで、最初のポジション争いが激化します。
      先行できるスピードと、タフなダートをこなすパワーが求められます。
  • 脚質別傾向
    全体的に「差し・追い込み」馬が圧倒的に有利です。
    特に外回りコースでは、先行馬が下り坂でペースを上げ過ぎて失速するケースが多発します。
    騎手がどこで「下り坂の加速」を入れるか、そのタイミングが勝敗を分けます。

アクセスと周辺情報:京都を満喫する

アクセス:利便性の高さ

  • 電車京阪本線「淀駅」から徒歩すぐ(連絡通路直結)
    アクセスは非常に良好です。
  • 車:名神高速道路「京都南IC」から約15分。
    駐車場も完備されていますが、GⅠ開催日は大変混雑するため、公共交通機関の利用が推奨されます。

周辺観光:古都・京都の魅力

京都競馬場での観戦と合わせて、古都の魅力を満喫しましょう。

  • 伏見稲荷大社
    朱色の千本鳥居が有名な観光スポット。
    競馬場からも比較的近く、アクセスしやすいです。
  • 寺田屋
    幕末の志士・坂本龍馬ゆかりの地。
    歴史好きにはたまらない場所です。
  • 京都タワー・京都駅周辺
    帰路の途中に立ち寄りやすく、お土産の購入や食事に便利です。

まとめ:京都競馬場は「伝統と新しさ」が息づく大舞台

京都競馬場は、リニューアルにより最新の快適性と、伝統の「淀の坂」がもたらすダイナミックなレース展開が融合した、最高の競馬体験を提供する場へと進化しました。

長大な外回りでの豪快な差し切り、京都ならではの上品なグルメ、そして新設された公園のようなファミリーエリア。競馬ファンも初心者の方も、全ての人にとって京都競馬場は、五感を刺激し、非日常を味わえる最高のエンターテイメント空間です。

次回の京都開催には、ぜひ新しくなった競馬場へ足を運び、古都の熱いドラマを体感してみてください。

※上記情報は、訪問した際の内容に基づき作成しておりますが、最新の情報や開催期間等はJRA公式HP(京都競馬場)にてご確認ください。