中央競馬の東の拠点として、伝統と格式を誇る中山競馬場。
その代名詞は、なんといってもゴール前の急な上り坂、そして暮れの競馬の祭典「有馬記念(GⅠ)」に代表される数々のドラマティックな名勝負です。

東京競馬場が「スピード」の府なら、中山競馬場は「パワーとスタミナ」が問われる難攻不落の要塞
JRA全10場で最大の高低差とタイトなコース設計は、予想家やファンに常に新たな戦略を要求します。

本記事では、この「東の雄・中山の魅力を徹底的に解説し、その独自のコース特性から生まれる予想のヒント、そして競馬をしない方でも一日中楽しめる最新の観戦ガイドまで、中山競馬場を最大限に楽しむための情報を網羅します。

中山競馬場の基本情報と歴史

概要と開催時期

中山競馬場は、JRA(日本中央競馬会)が主催する中央競馬の開催場の一つです。

  • 所在地千葉県船橋市古作1-1-1
  • 特徴JRAの競馬場の中で最も高低差が激しく、最後の直線に待ち受ける急坂が勝敗を分ける究極のパワーコース。
  • 主な開催時期
    • 冬・年始の開催(1月)
      新年の幕開けを告げる「中山金杯(GⅢ)」から始まり、クラシックの前哨戦「京成杯(GⅢ)」「弥生賞ディープインパクト記念(GⅡ)」など、重要なステップレースが組まれます。
    • 春の開催(3月~4月)
      牡馬クラシック三冠の第一関門「皐月賞(GⅠ)」が開催されるほか、障害競走の最高峰「中山グランドジャンプ(J・GⅠ)」が行われます。
      「日経賞(GⅡ)」などもこの時期の主要レースです。
    • 秋の開催(9月)
      短距離路線の頂点「スプリンターズステークス(GⅠ)」が開催。
      長距離路線へ向かう「セントライト記念(GⅡ)」や、秋の古馬王道路線に向けた「オールカマー(GⅡ)」などがあります。
    • 年末の開催(12月)
      一年を締めくくる競馬の祭典「有馬記念(GⅠ)」と、2歳チャンピオン決定戦の一つ「ホープフルステークス(GⅠ)」のほか、大障害競走「中山大障害(J・GⅠ)」が組まれます。
      また、開催年によっては、上記GⅠの3レースが2日間で開催されます。(2025年)
※スケジュールは開催年によって変化しますので、詳しくはJRA公式サイト(開催日程)にてご確認ください。

歴史とスタンド名称

中山競馬場のルーツは、1907年に開設された「松戸競馬場」に遡り、1920年代に現在の場所に移転しました。
長い歴史の中で改修が繰り返され、現在のメインスタンド(グランドスタンド中山競馬場のメインとなる観客席。ゴール前の大迫力のレースを間近で観戦できます。)は「グランドスタンド」として知られています。

中山競馬場の最大の魅力:JRA最大の高低差5.3m

中山競馬場のコースレイアウトは、「難攻不落の要塞」と呼ばれる通り、JRA全10場の中で最もタフであり、その心臓部は5.3mという壮絶な高低差にあります。

JRA最大の勾配を持つ「魔の急坂」

芝コース全体で5.3mの高低差を持ちます。
これは、高低差が4.3mの京都競馬場を上回り、全場で最大です。
この高低差が、レース展開に決定的な影響を与えます。

  1. スタート後の上り坂多くの距離で、スタート直後にまず上り坂に入り、馬群のペースを一度落ち着かせます。
  2. 向こう正面から3コーナーにかけての下り坂3コーナーにかけて長い下り坂が続き、馬群のスピードが大幅に加速します。
    ここでいかにロスなく脚を溜め、勢いをつけるかがポイントです。
  3. ゴール前の「急坂」そして、短い直線310mの途中に待ち構えるのが、勾配2.24%の急な上り坂です。
    下り坂でつけた勢いをここで振り絞る必要があるため、スピードだけでなく究極のパワーとスタミナが要求されます。

芝・ダートのコースデータ(JRA公式情報)

中山競馬場のコースは、内回り、外回り、そして障害コースの3種類があります。

コース一周距離直線距離高低差主な発走距離
芝コース(外回り)1,839.7m310.4m5.3m2,500m(有馬記念)他
芝コース(内回り)1,667.1m310.4m5.3m2,000m(皐月賞)他
ダートコース1,493.0m308.0m4.5m1,800m、1,200m他
障害コース距離不定310.4m5.3m4,250m(中山大障害)他
※コース詳細は、JRA公式サイト(コース紹介:中山競馬場)からご確認ください。

究極のスペクタクル:障害コースと名物障害

中山の障害コースは、日本最高峰のレースの舞台であり、大竹柵や大生垣といった巨大な名物障害物が有名です。特に「中山グランドジャンプ(J・GⅠ)」「中山大障害(J・GⅠ)」は、芝・ダートのコースを横切り、坂路も含む過酷なコース設定により、世界的に見ても稀な究極の耐久レースとして知られています。

中山競馬場での馬券攻略:パワーと持久力の見極め

中山競馬場で勝利を掴むための戦略は、京都や東京といったスピードコースとは根本的に異なります。
「坂」と「短い直線」という2つの要因を味方につける馬を見極めましょう。

「中山巧者」の条件:パワー&スタミナ

中山の急坂を乗り越える馬には、以下の資質が求められます。

  1. 底力(パワー)東京の坂が最後の緩やかな加速のためのものとすれば、中山の坂は「粘り強さ」を試されます。
    ラスト100mでバテずに加速し続けられるトモ(後肢)の強さを持つ馬を評価しましょう。
  2. 器用なコーナリングと機動力内回り・外回りともにコーナーがきつく、タイトな設計です。
    多頭数になるGⅠでは、外を回ると大幅な距離ロスが生じるため、内でロスなく立ち回れる器用さが勝利の鍵を握ります。
  3. タフなレース経験総じて、中山のレースはタフな消耗戦になりやすいです。
    荒れた馬場や重い芝、長い距離など、厳しい条件で実績のある馬は、中山の急坂を苦にしないことが多いです。

距離別・脚質別の傾向

距離特徴と戦略のヒント
芝2,500m(外回り)スタート直後に坂を上るため、序盤のペースは落ち着きがち。
最後の急坂を乗り越えるスタミナと持続力が最重要。
内枠から先行して脚を溜めた馬が有利。
芝2,000m(内回り)     スタート後の最初のコーナーまでが長く、枠順の有利不利は少ない。
タイトな内回りをロスなく回る機動性が必須で、先行抜け出しのパターンが多い。
芝1,600m(外回り)スタートしてすぐに長い下り坂に入り、ハイペースになりやすい。
スピードだけでなく、最後まで脚を使えるタフなマイラーが好走します。
ダート1,800m芝コース以上に内枠と先行脚質が有利。
スタート後の上り坂でポジションを取りに行くため、先行できるスピードと、タフなダートをこなすパワーが求められます。

観戦ガイド:快適な施設と名物グルメ

中山競馬場は、歴史ある施設と、近年の整備で快適性が向上した空間が融合しています。

快適な観戦環境:指定席とスタンド

メインスタンド(グランドスタンド)には、多様なニーズに応える指定席が用意されており、ネット予約が可能です。
ただし、重賞開催日は特に抽選となるので、3週間程前から抽選スケジュールの確認が必要です。

※2024年の有馬記念開催日の指定席抽選倍率は、約20倍から300倍となっていました。
  • 指定席の種類
    • G-Seat(ゴンドラ階)(おすすめ!!眺めも最高です!)
      スタンド最上階に位置し、屋内席と屋外席の両方が利用可能。
      コンセントも完備されています。
    • K-Seat(スタンド3階)(ゴール板からは遠いですが、2人座れるくらい広いです!)
      お一人様向けのゆったりとしたワイドタイプの席で、ミニモニターとコンセントが設置されています。
    • A-Seat(スタンド3階)
      ゴール板に最も近い観戦席で、熱い攻防を間近で観たい方に人気です。
      ミニモニターとコンセントも設置。
    • V-Seat(スタンド4階)
      眺めの良い4階席で、4コーナーから直線にかけての攻防を見渡すのに適しています。
      ミニモニターとコンセントも設置。
    • B-Seat(スタンド3階)
      リーズナブルな価格で利用できる観戦席です。
    • ボックスシート(抽選時は倍率が極めて高い!)
      グループや家族で利用できる個室タイプの指定席です。
※スマートシートもあります。

中山競馬場の名物グルメ

中山競馬場には、長年愛される関東ならではの名物料理があります。

  • 勝負メシの定番
    もつ煮関東の競馬場の定番グルメといえば「もつ煮込み」。
    複数の店舗が自慢の味を提供しており、特に寒い冬の開催には、温かいもつ煮が最高の”勝負メシ”として人気を博します。
    フードコートが充実し、定番のラーメン、カレー、ファストフードから、地域色のあるメニューまで幅広い選択肢が楽しめます。
ど・みその中山スペシャルみそラーメン
※詳細は、JRA公式サイト(レストラン・ファストフード:中山競馬場)からご確認ください。

家族連れも大満足!キッズ&イベント

中山競馬場は、家族連れでも楽しめる「公園」としての側面も強化しています。

  • うまキッズルーム
    馬場内エリアにある大型の屋内あそび場。
    京都の「Paka Run!」と同様に、親子の室内あそび場「キドキド」でおなじみのボーネルンド社がプロデュースしています。
    生後6ヶ月から12歳までを対象としており、天候を気にせず、親子で心・頭・体を使って思いきり遊べる全天候型の施設です。
    ※利用には「競馬場イベント参加アプリ」での事前予約が必要な場合があります。
  • うまキッズひろば
    屋外に設置された遊具エリアです。
    広々とした空間で、子供たちが体を動かして遊べる場所です。
  • ポニー試乗会・ふれあいイベント
    開催日には、子供たちがポニーに乗れる体験乗馬や、馬とのふれあいイベントが開催され、動物との触れ合いを通じて競馬を身近に感じることができます。
  • イベントステージ
    GⅠレースや重賞開催日には、芸能人やジョッキーを招いたトークショー、ファン参加型イベントなどが盛大に開催され、会場を盛り上げます。
※詳細は、JRA公式サイト(うまキッズルーム:中山競馬場)からご確認ください。

女性専用の憩いの場:UMAJOスポット

女性の競馬ファン「UMAJO」のための専用休憩スペースも設けられています。
レースの喧騒から離れ、ドリンクサービスを受けながらリラックスできる空間です。
場所やサービス内容は、JRAのUMAJO公式サイトでご確認ください。

アクセスと周辺情報:関東の競馬拠点を楽しむ

アクセス:利便性の高さ

  • 電車
    • JR船橋法典駅
      競馬場専用の地下道「ナッキーモール」を通じて徒歩約14分で直結。
      これが最も一般的なアクセス方法です。
    • JR西船橋駅
      開催日には直行バスが運行されることがあります。
    • 京成東中山駅
      徒歩約20〜30分。
  • 車での来場
    京葉道路「原木IC」から約10分。
    大規模な駐車場が完備されていますが、有馬記念などのGⅠ開催日は非常に混雑し、駐車券の事前購入が必要になることが多いです。
    公共交通機関の利用を強く推奨します。

周辺観光・寄り道スポット

  • 船橋駅周辺
    ターミナル駅である船橋駅は、デパートや大型商業施設が充実しており、レース前後の食事やショッピングに便利です。
  • ららぽーとTOKYO-BAY
    大型ショッピングモールであるららぽーとTOKYO-BAYへの立ち寄りも可能です。

まとめ:中山は「熱狂と試練」の競馬場

中山競馬場は、JRA最大の高低差5.3mという物理的な難関、そしてタフなコース設計によって、「東の急坂」として知られる、戦略的で熱狂的なレースを繰り広げる舞台です。

特に、全馬が必死に坂を駆け上がるゴール前の光景は、競馬の醍醐味を凝縮した、他に類を見ない感動を与えてくれます。有馬記念、皐月賞、そしてスプリンターズステークスと、競馬の歴史を彩る数々の名勝負が生まれてきたこの場所は、まさに「熱狂と試練」の競馬場。

馬券戦略としては、スピードよりもパワーとスタミナ、そしてタイトなコーナーをロスなく回る器用さを兼ね備えた「中山巧者」を見抜くことが、勝利への鍵となります。

東の難関、中山競馬場で、ぜひその熱狂的なドラマを体感してください。

※本記事は、訪問した際の内容に基づき作成しておりますが、最新の情報や開催期間等はJRA公式HPにて必ずご確認ください。