長崎の歴史を食べる!「ちゃんぽん・皿うどん」発祥の店、四海樓の魅力に迫る
長崎のソウルフード「ちゃんぽん」と「皿うどん」の生みの親こそ、今回ご紹介する老舗中華料理店「四海樓」です。
長崎は、鎖国時代に唯一開かれていた窓として、異文化と深く交流してきました。
その地で明治時代に創業した四海樓の歴史は、まさにその交流が生み出した「食のハイブリッド文化」を象徴しています。
単なる食事処にあらず、長崎の文化と歴史そのものと言っても過言ではない四海樓の魅力と、絶品のちゃんぽんを深掘りします。
四海樓の歴史:長崎で花開いた創業者の「人道的な一杯」
四海樓の創業は、明治32年(1899年)。
100年以上の時を超え、今も長崎の地に立つこの店を創り出したのは、中国・福建省出身の陳平順氏です。
故郷を想う心が生んだ「愛の賄い飯」
若くして長崎へ渡った陳氏は、唐人屋敷跡(広馬場町)に旅館兼飲食店として四海樓を開きました。
当時の長崎には、清国からの多くの留学生や華僑同胞が苦学していました。
言葉も慣習も違う異国で奮闘する彼らを目の当たりにした陳氏は、世話好きな性格もあり、彼らに何か温かく、力になるものを食べさせたいと強く願ったのです。
彼が求めた料理の条件は厳格でした。
- 栄養価が高いこと
異国の地で健康を維持するため。 - ボリュームがあること
食べ盛りの留学生の胃袋を満たすため。 - 安価であること
苦学生でも毎日食べられるようにするため。
この切実なニーズに応えるべく、故郷福建料理の「湯肉絲麺」をベースに、長崎で豊富に獲れる魚介や野菜、そして鶏ガラ・豚骨を煮込んだスープを使った、和華折衷の麺料理が誕生しました。
これが、当初「支那うどん」と呼ばれていた、後のちゃんぽんの原点です。
長崎の心意気を伝える「四海樓」という名の願い
店名「四海樓」は、「四海」(世界、天下)が平和であり、世界中の人々が仲良く暮らせるようにという陳氏の壮大な願いが込められています。
四海樓のちゃんぽんは、単なる麺料理ではなく、国境を越えた「人道的な精神」の象徴なのです。
「ちゃんぽん」という名称は、当時の華僑が食事を呼びかける時の福建語の挨拶「吃飯(セッポン/シャポン)」(ご飯を食べる)から転じたという説が広く知られています。
また、陳氏が「日本中の人が喜んでちゃんぽんを食べてくれたら、それで満足だ」と語り、特許を取らなかったという逸話も残っており、その寛大で庶民的な人柄がうかがえます。
長崎港を見下ろす絶景!四海樓の壮麗な建物と文化発信
四海樓の店舗は、長崎観光のゴールデンルート(大浦天主堂、グラバー園)にもほど近い松が枝町に位置します。
現在の建物は2000年にリニューアルされた五層のモダンなビルとなっています。
5階 展望レストラン:食事も景色も「ごちそう」に
この建物の最大の魅力は、5階の展望レストランです。ガラス張りの窓からは長崎港を一望でき、対岸の稲佐山、そして松が枝埠頭に接岸する国際クルーズ船の姿を眺めながら食事が楽しめます。
- 昼間
太陽にきらめく長崎港と、異国情緒あふれる街並みのコントラストを楽しめます。 - 夕方~夜
長崎の美しい夜景、特に稲佐山側の光のきらめきは、ちゃんぽんの美味しさを何倍にも引き立ててくれます。
窓側の席を確保できれば、食事の時間がより一層、長崎の旅のハイライトとなるでしょう。
2階 ちゃんぽんミュージアム:歴史を学ぶ
2階の「ちゃんぽんミュージアム」は、無料で楽しめます。
創業当時の古写真や、ちゃんぽん・皿うどんの誕生秘話、歴代の歩み、そして長崎華僑の歴史を深く知ることができます。
食前に立ち寄れば、ちゃんぽんに対する味わい方も変わってくるはずです。
このミュージアムは、ただの待ち時間潰しではなく、長崎の食文化の背景を学ぶ貴重な施設です。
元祖の味を堪能!四海樓の「特製ちゃんぽん」と「皿うどん」
四海樓に来たら、観光客も地元客も、やはりこの二大看板メニューは外せません。
歴代当主によって守り継がれてきた、元祖ならではの味の秘密に迫ります。
コクと深みが違う!元祖の「特製ちゃんぽん」の秘密
四海樓のちゃんぽんは、長崎市内で数あるちゃんぽん店の中でも、そのスープの奥行きが違います。
- 特製スープの黄金比
豚骨と鶏ガラを長時間じっくり煮込んだスープは、見た目の白さとは裏腹に、あっさりとして上品な口当たりです。
しかし、ラードで具材を炒め、その旨味を逃さずスープに溶け込ませる調理法が、深いコクとまろやかさを生み出しています。 - 「唐灰汁(とうあく)」麺の伝統
長崎のちゃんぽん麺には欠かせないアルカリ塩水「唐灰汁」を使った特製麺を使用しています。
この麺は、スープをしっかり吸い込む独特のコシと風味があり、他の麺では再現できないモチモチ感と、麺自体の微かな甘みが特徴です。 - 贅沢な海の幸
海老、イカ、アサリ、かまぼこなど、新鮮な魚介と大量の野菜が、栄養満点だった創業時の「賄い飯」の精神をそのまま体現しています。
太麺・細麺どっち?四海樓の「皿うどん」徹底比較
皿うどんも、ちゃんぽんのバリエーションとして陳平順氏が考案した四海樓発祥の料理です。
- 元祖(太麺/ソフトタイプ)
これこそが、ちゃんぽんの麺を使った元祖・皿うどんの姿です。
ちゃんぽん麺を強火で焼き付けて香ばしさを出し、具材の旨味と少量のスープで麺に味をなじませた「汁なしのちゃんぽん」のようなものです。
もっちりとした食感と濃厚な餡が特徴で、長崎ではこちらを好む地元客も非常に高い人気を誇ります。 - 細麺(パリパリタイプ)
極細の油揚げ麺に、とろみのある熱々の餡をかけた、全国的に有名なスタイルです。
パリパリとした麺の食感と餡のコントラストが楽しく、時が経つにつれて麺が餡を吸って変化していくのも醍醐味です。
四海樓の真髄を味わうなら、ぜひ創業者が考案した太麺(ソフトタイプ)の皿うどんを試すべきでしょう。
主要メニューと金額
四海樓の代表的なメニューの価格帯は、以下の通りです。(※時期や消費税率により変動する場合があります)
| メニュー名 | 価格の目安(税込) | 備考 |
| 特製ちゃんぽん | 1,430円 | 創業当時からの看板メニュー。魚介と野菜がたっぷり。 |
| 皿うどん(太麺) | 1,430円 | 元祖の味。もっちりしたちゃんぽん麺に濃厚な餡。 |
| 皿うどん(細麺) | 1,430円 | パリパリの揚げ麺に餡をかける、全国的なスタイル。 |
| その他単品料理 | - | チャーハン、麻婆豆腐、八宝菜などの中華料理も充実。 |
長崎港を見下ろす絶景を楽しみながら、この価格帯であれば、旅の記念としても十分に満足できるでしょう。
アクセス・店舗情報
長崎港の美しい景色を眺めながら、一杯のちゃんぽんに込められた歴史と創業者の熱い想いを噛みしめてみてはいかがでしょうか。
| 項目 | 詳細情報 |
| 店名 | 中華料理 四海樓 |
| 住所 | 〒850-0921 長崎県長崎市松が枝町4-5 |
| アクセス | 路面電車「大浦天主堂」電停下車 徒歩2分 |
| 営業時間 | 11:30~15:00(L.O. 14:30)/17:00~20:00(L.O. 19:30) |
| 定休日 | 不定休・年末年始など |
| 備考 | 5階の展望レストランは長崎港を一望できます。 2階に「ちゃんぽんミュージアム」あり。 |
まとめ
長崎のグルメ旅において、四海樓は単なる中華料理店ではありません。
創業者の陳平順氏が抱いた「留学生を想う心」から生まれた元祖ちゃんぽんを味わうことは、長崎が歩んできた国際交流の歴史そのものを体験することに他なりません。
長崎港を見下ろす絶景の展望レストランで、熱々のちゃんぽんや、太麺・細麺から選べる皿うどんを堪能してください。お腹と心を満たし、さらに「ちゃんぽんミュージアム」で長崎の歴史にも触れられる四海樓は、長崎観光の行程に欠かせないランドマークです。
※上記情報は、訪問した際の内容に基づき作成しておりますが、最新の営業時間や料金は公式HPにてご確認ください。