全国、そして世界にその名を轟かせる「天然とんこつラーメン専門店 一蘭」。
独自の「味集中カウンター」とカスタマイズ可能なオーダーシステムで、ラーメンの食べ方に一石を投じたこの店の、記念すべき第1号店が福岡市中央区にある「那の川店」です。

今回は、一蘭の歴史を語る上で欠かせないこの那の川店を訪れ、そのルーツと一杯に込められたこだわりを、熱烈なファン目線で深掘りします。

発祥店の看板

一蘭「那の川店」の歴史:博多ラーメンを「一蘭」にした場所

一蘭のルーツは1960年(昭和35年)に福岡市で創業したラーメン店にありますが、私たちが知る「天然とんこつラーメン専門店 一蘭」の歴史は、1993年(平成5年)9月にこの那の川店(当時は那の川日赤通り店)が開業したことに始まります。

創業者の吉冨学氏が、従来のラーメン店の常識を覆す様々なアイデアを具現化し、一蘭というブランドを確立した「発祥の地」が、まさにここ那の川店なのです。

一号店看板

革命的システム発祥の地

  • 味集中カウンターの原点
    那の川店では、初期の段階からカウンター各席の間に仕切り板を設置し、さらに客席と厨房を隔てる暖簾を設置するスタイルを導入。
    これが、後に一蘭の代名詞となる「味集中システム」の原点となりました。
    「人は誰が作ったかによって味の感じ方が変わる」という吉冨氏の気づきから生まれ、目の前のラーメンと真摯に向き合える環境を提供しました。
  • 記入式オーダーシステム
    麺の硬さ、スープの濃さ、秘伝のたれの量など、お客様一人ひとりの好みに合わせた「自分好みの一杯」を提供するための「記入式オーダー用紙」も、那の川店から始まった重要なシステムです。

この小さな店舗から始まったユニークなシステムと徹底したこだわりが、やがて日本全国、そして海外のラーメン文化に大きな影響を与えることになります。
一蘭の飛躍は、那の川店での試行錯誤なくしては語れないのです。

味集中カウンター
こだわりの一覧

アクセスと料金:一蘭・那の川店へ辿り着く

一蘭の歴史的な出発点である那の川店は、福岡の街に溶け込んだ、地元に愛される場所に位置しています。

アクセス情報

項目詳細
住所〒815-0081 福岡県福岡市南区那の川2-2-10
最寄り駅西鉄天神大牟田線 西鉄平尾駅
駅からの道順西鉄平尾駅から徒歩約9分。
日赤通り沿いに位置しており、比較的わかりやすい立地です。
営業時間24時間営業(年中無休)
※最新情報は公式HP要確認
駐車場有(約10台)。
車での訪問も可能です。

那の川店は、観光客が集中しすぎることは比較的少ないですが、席数も15席と他店より少なく、地元の方々や深夜の利用客も多いため、混雑を避けたい場合は、ランチやディナーのピークタイムをずらすのがおすすめです。
24時間営業という利点を活かし、早朝や深夜に訪れると、「味集中カウンター」でより静かにラーメンと向き合えるでしょう。

空席案内板

料金の目安

  • 天然とんこつラーメン
    980円(税込)です。
  • 平均予算
    通常、トッピングや替玉を追加して1,000円~1,500円程度を想定しておくと良いでしょう。
    個人的には、煮こみ焼豚皿が絶品でした。
券売機のメニュー
煮こみ焼豚皿

一蘭のラーメンは、他の博多ラーメンと比較すると価格帯は高めですが、その価格は「最高の味と空間を提供する」という一蘭の徹底したこだわりが詰まったものです。


実食レビュー!源流の味に「全集中」

全国どこの一蘭でも、基本の味は統一されていると言われますが、やはり「1号店」という特別な場所でいただく一杯には、格別の高揚感があります。

入店から着丼まで:1号店のこだわり

那の川店は、西鉄平尾駅から少し歩いた日赤通り沿いにあります。
外観は落ち着いた雰囲気で、他のチェーン店と同様に券売機と空席案内板が設置されています。

味集中カウンターに座り、オーダー用紙に記入。
今回は、源流の味を感じるため、すべての項目を「基本」でオーダーしました。

スープ:濃厚さと洗練の両立

「天然とんこつ」の名にふさわしい、豚の旨みが濃厚でありながら、後味は驚くほどすっきりとしています。
豚骨特有の臭みは最小限に抑えられ、むしろ心地よい香りのアクセントに昇華されています。
このバランスの良さこそが、一蘭が多くの人に愛される理由でしょう。

昔ながらの「こってり」とした博多とんこつとは一線を画す、洗練された「上質なとんこつスープ」の味わいです。

麺と「秘伝のたれ」のハーモニー

「わた麺」と呼ばれる糸島の自社工場製の極細ストレート麺は、硬めで注文したため、しなやかさの中に心地よい歯ごたえを感じます。
この麺が、濃厚なスープをしっかりと持ち上げ、口の中で絶妙に絡み合います。

次に、秘伝のたれを溶かしながらスープを飲むとピリッとした辛味と、たれに含まれる甘みがスープ全体に深みを与えます。
この「秘伝のたれ」の存在こそが、一蘭のラーメンを唯一無二のものにしていると言っても過言ではありません。
この絶妙なアクセントがないと、何かが物足りなく感じてしまうほどです。

替玉と味変:無限に楽しめる一杯

豚骨ラーメンの醍醐味といえば「替玉」。
もちろん、卓上の追加注文用紙で迷わずオーダー。
チャルメラのメロディとともに、すぐに湯気の立つ替玉が提供されます。

そして今回は、個人的におすすめしたい「オスカランの酸味」(黒酢ベースの柑橘系調味料)を追加。
替玉投入後のラーメンに少量を加えると、豚骨スープとは思えないほど後味がフレッシュでさっぱりと変化!
濃厚な味わいに飽きが来ず、最後のひとしずくまで美味しくいただけました。


究極の味はこうして生まれる!製造の「魂のこだわり」

一蘭が単なるラーメン店ではなく、グローバルブランドとして成功している最大の要因は、その「天然とんこつスープ」と「超生麺」、そして「赤い秘伝のたれ」を産み出す、一切妥協のない製造体制にあります。
そのこだわりは、まさに「魂」が込められていると言っても過言ではありません。

一蘭の味の秘密を探るには、福岡県糸島市にある生産拠点「一蘭の森」の存在が欠かせません。
この工場から、那の川店を含む全国・海外の店舗へ、最高の材料が届けられています。

一蘭の森入口

1. スープ:高度な技術で「臭みを消し、旨味を残す」

一蘭のスープは、100%豚の骨から抽出した天然とんこつスープです。
しかし、ただ煮出しただけでは、とんこつ特有の「臭み」が出てしまいます。

  • 特殊製法と専属職人
    一蘭では、高度な技術を要する特殊製法を駆使し、余分なアクを時間をかけて丁寧に取り除くことで、とんこつの旨味だけを最大限に残し、臭みのない黄金比のスープを完成させます。
  • 門外不出のレシピ
    このスープのレシピを知る者は、社内でもたった数人の専属職人のみ。
    厳重な体制で製造・管理されており、どこで食べても「一蘭の味」が再現される仕組みです。

2. 麺:「15秒の掟」を生む超生麺

一蘭の麺は、独自ブレンドの小麦粉を使用し、スープとの絡みやのど越しにこだわった「超生麺(わた麺)」です。

  • 気象条件に合わせた調整
    麺は非常にデリケートなため、季節の変わり目や気象条件に合わせて水の量を微調整するなど、徹底した品質管理が行われています。
  • 「15秒の掟」
    この麺は美味しさを最優先で製造されているため、スープの中で刻一刻と状態が変化し、味が落ち始めます。
    そのため、一蘭では「ラーメンが出来上がってから15秒(28.8m)以内でお客様にご提供する」という「15秒の掟」が設けられています。
    これは、お客様に最も美味しい状態で麺を味わってもらうための、ギリギリの挑戦であり、一蘭のサービス精神の象徴です。

3. 赤い秘伝のたれ:味の奥行きを生む「元祖」の調合

ラーメンの真ん中に浮かぶ「赤い秘伝のたれ」は、一蘭が唐辛子入りたれを浮かべるスタイルを始めた「元祖」です。

  • 30数種類の材料と熟成
    唐辛子をベースに、30数種類の材料を調合し、何昼夜も寝かせて熟成させています。これにより、単なる「辛さ」ではなく、様々な旨味が口の中に広がり、とんこつスープに奥深いコクとパンチを加えます。
  • レシピの秘密
    この「赤い秘伝のたれ」の材料・レシピも、社内でたった4人しか知らないという徹底した秘密主義が敷かれています。
    これは、一蘭のコアな味を絶対に守り抜くという強い意志の表れです。

4. チャーシューとどんぶりにも魂が宿る

  • 釜だれとんこつと釜だれ
    一蘭のチャーシューは、肉のスペシャリストである職人が包丁の入れ方ひとつにもこだわって調理されています。
    このチャーシューを作る際に出る旨みたっぷりの煮汁を再現したものが「釜だれ」であり、スープの味にさらなる深みを与えています。
  • 有田焼のオリジナルどんぶり
    一蘭のどんぶりは、佐賀県の有田焼職人によって一つひとつ丁寧に作られたオリジナルです。
    創業以来どんぶりの底には「この一滴が最高の喜びです」という感謝のメッセージが書かれており、お客様への「完食」を促す工夫と、ラーメンへの誇りが込められています。
創業以来どんぶりの底
※創業以来どんぶり以外にも八角どんぶり、合格どんぶり、重箱どんぶりがあるようです。

まとめ

一蘭 那の川店でいただく一杯は、単に美味しいという言葉では語り尽くせない、「天然とんこつ」の頂点を目指す職人たちの情熱と、お客様への細やかな配慮が凝縮されたものです。

「味集中カウンター」で環境を整え、「オーダー用紙」で個人の好みを反映し、「15秒の掟」で最高の状態で提供する。

このすべてのシステムと製造のこだわりは、創業者の「お客様に最高の状態で、最高のラーメンを味わってほしい」という強い願いから生まれています。

一蘭 那の川店。
ここは、ラーメンというシンプルな料理の可能性を極限まで追求した「全集中」の哲学を感じられる、まさに聖地です。

※上記情報は、訪問した際の内容に基づき作成しておりますが、最新の営業時間や料金は店舗HPにてご確認ください。